1998年7月27日 part1

福島県のある中学校


しかし、眠れない…


朝6時か…。


今回も1時間半しか眠れなかった。





まだ、野宿でゆっくり眠れた事がない…。

どこでも眠れると思っていたのに、自分で思っていたより神経質のようだ。

「しかし、金もないし、宿に泊まってばかりもいられないよな…。」





一人でぼやいていると、バレーボール部の生徒さん達だろうか

部活の格好で、ワイワイとやってきたので、急いで中学校を後にした。



8時半

福島県いわき市の田舎道



朝から真夏日となり、アスファルトからは熱気がムンムンと上がり、先に見える景色は蜃気楼のようにぼやけて見える。


ヤバイ…。



めまいがする…。



ウッ…。



吐き気も…。



寝不足、疲れ、緊張、からだろうか…。


全身が倦怠感に包まれ、時間と共に視界が狭まっていく。


朦朧とした意識の中で、休める場所を探すため、ふらっと横道に入ってみた。




するとすぐに、「分校」と書かれた標札が目に入った。

そこから先は、急な上り坂になっていて、その建物の姿は見えない。

僕は

誰も来ないような廃校を勝手にイメージし

ここなら、きっと安心して眠れるんじゃないか?

そう思いながら、背中を押されるようにして、夢中で上り坂を上った。




「……。」


そこには、ドラマで出てくるような、推定築50年位の「分校」が建っていた。

車が何台かある…?。

誰かいるようだな…。






恐る恐る入口を開けると、1人のおばさんが出てきた。

60才位だろうか?

少し暗そうな印象の顔立ちに、少し戸惑ったが


「自転車で旅をしている者です、体調が悪くなってしまったので、

仮眠出来る場所を探しているのですが…。」


と言ってみた。

しかしおばさんは、しかめた顔をしながら

「ここは、子供の習字の練習所なんだけど、もう閉める時間だし、うちは遠いから…」

と、僕を軽くあしらった。






そこから動く気力もなく、小さなグラウンドの片隅に寝袋を引き、倒れこんだ。

しかし、時間と共に気温はどんどん上昇してくる。

暑さで、とても寝るどころではない。

体調は悪くなる一方だ。





「死」という言葉が頭によぎった。




30分位苦しみ続け

意識が飛びかけてた頃

おじさんの声が耳に入ってきた。


「大丈夫か?大丈夫か?」


目を開けると、裸の大将のような白のタンクトップに、サルマタ姿のおじさんが、

心配そうな目で僕の側に立っている。

僕は上半身を起こし、事情を説明した。

するとおじさんは、こっちに来い、と、習字の練習場の中に連れて行ってくれる。






教室を越えると、台所も、お風呂もある

どうやらここに住んでいる人のようだな…。





おじさんは、僕を茶の間に座らせると、奥さんに事情を説明して、ご飯を作らせ


「とりあえず、たくさん食べ!」と


僕にご飯を食べさせてくれた。





話しを聞くと

分校が廃校になったので、ここを自宅に改造し、子供達に習字を教えている、という事らしい…





ご飯を食べ終え、デザートに福島のももまで頂くと


「疲れてるんだな、ゆっくり寝てけ。」


と、別の部屋に布団を敷いてくれた。





しかし横になっても、眠る事ができない。

(ここで寝ておかないと、倒れるかもしれない…。)

そんな緊張感が逆に眠りを妨げたのだろう。





眠れないまま、12時のチャイムが聞こえたので体を起こすと、奥さんが様子を見にきてくれて

「お昼ご飯、用意できてるけど食べれそうかい?」

と、聞いてくれる。

僕は

「はい、いただきます。」

と、茶の間へ向かった。






茶の間に着くと

ちゃぶ台の上には

カツ丼、みそ汁、きゅうりの漬物、もも、が並んでいる。

疲れている僕のために作ってくれたメニューのような気がして、うれしかった。



「笑っていいとも」を見ながら、3人で笑って食事をした。


僕は

(これは夢じゃないだろうか?起きたらグラウンドの片隅とかだったりしないよな?)

と、現実を疑った。



まさか自分が、福島県の山手の知らない人の家で、笑っていいとも見ながら、カツ丼食べてるなんて姿

まるで想像していなかったし…。




お昼ご飯を頂くと


「もう少し横になって休んでいったらどうだ?」


と、言ってくれたので

その言葉に遠慮する事なく再び布団に入った。

すると、今度はすぐに眠りにつく事ができた。





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