1998年7月27日  part2

眼を覚ますと…

そこはグラウンドの片隅だった…。





なんて事もなく、眼が覚めたので、布団から体を起こし、台所へ行って時計を見ると…

16時過ぎ。

2時間ほど寝てたようだ。


そして、おじさんは更に

「風呂わかしてあっから、熱い風呂に入って疲れを取れ!」

と風呂場に連れていってくれる。


お風呂に浸ると

とてつもなく幸せな気分になり

全てに対する感謝の気持ちが、心の底から込み上げてきた。






風呂を出て麦茶を頂き、出発の準備を整えていると

奥さんが、きゅうりの漬物、桃、飲み水を持たせてくれる。

そして、二人はまるで、息子の旅立ちを見送るかのような、心配そうな眼差しで

「体には気いつけてがんばりや。」

と、見送ってくれた。



たまたまそれた横道

たまたま目についた標札

動けずにグラウンドに倒れ込み

たまたまおじさんが僕を見つけてくれた。

いろんな偶然が重なり



僕は救われた…。






この先、まだ何があるか分からないし

多分なら、更なる困難が僕を待ち受けているだろう。

しかし僕は、たとえ今回北海道に辿り着けなかったとしても

この数日間の経験で

すでに、大きな「人生の糧」のような物を手に入れている事に気づき始めていた。

そして、きっとこの想いを一生忘れる事はないだろう…。

僕の目から、連日の涙がこぼれた。






しかし、いい経験をしたのは事実だが

現状は急激に変わるわけではない。

まだ完全に寝不足が解消できた訳でもないし

今後、寝場所に困らなくなる訳ではないのだ…。




20時

「分校」を出て、30キロほど走った所にあった町で、寝場所を探した。

とりあえず町の中をフラフラと走り、学校・公園・橋の下・高跨下など、めぼしい場所をチェックしていると

空き地に「ヤ○マー」と書かれた背の低いテントがはられているのが目にはいってきた。


「誰の目も気にせず眠れる最高の寝場所だ!今日はやっぱりついてる。

朝方に出れば問題もないだろう。」

真っ暗のテントの中に入ると、地面が少し濡れていたが、僕は気にせず寝袋を引いて横になった。





30分後

下半身がビシャビシャになってるのに気付き眼を覚ました。

真っ暗でわからなかったが、下半身の方は、予想以上に地面がぬかるんでいたようだ…。

寝袋もズボンもパンツもビシャビシャ…。



最高の寝場所ではなく、最悪の寝場所だったようだ。

テントから出て着替え、泥だらけの寝袋をしまい、深いため息をつきながら

再び寝場所を探し、町をさ迷った。


キョロキョロと辺りをうかがいながらはしっていると…


「ガコッッッッ!」



前輪が深さ50センチ位のドブにはまってしまった。

おまけに、肩と股間を強打。

一人で声のない叫びをあげていた。


「ハア…今日はついているのか、ついていないのか…?」


痛みがおさまり、自転車を引き上げると

また、めまいと吐き気におそわれてきた。


精神的なものからくる体調不良なのだろうか?

なんとかゆっくり眠れる場所を探さなくては…。



更に30分ほどウロウロしてみたが、どうにも寝場所が見つからない。

僕は迷ったあげく、次の町を目指してペダルを漕ぎ出した。




これは、一つの賭けであった。

田舎では、町と町の間は、だいたい山になっている事を

これまでの道のりで経験で分かっていた。



その山は、越えてすぐ町になるものもあれば

いつまでも山道が続くものもある。



そして山の中で、一人で野宿するのはいろんな意味で危険である。



僕は次の町がすぐ側である事を願い続けながら、走った。


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