13時
いつも通りの仕事がまるで手につかない。
(もしかして事故ったとか…?
シュウちゃんは、待ち合わせ場所に来ず、そのまま帰ってしまう様なタイプでもないし…。いや…でもな…。)
いろんな思いが頭の中を駆け巡り、いてもたってもいられなくなった僕は
坂上さんに、友人が事故をしたかもしれない、と話し、仕事を中断してもらい
電話を借りて、博美さんの携帯電話へかけてみた。
すると……………………
シュウちゃんが宿を出て数キロの所のジャリ道で、タイヤをとられ転倒。
重傷ではないが、足を怪我して曲げられない状態。
今は病院で手当てを受けているのだと言う。
さらに話しを聞くと
転倒した場所は、普段人の通る事のない裏道
シュウちゃんがバイクに足をはさまれて動けなくなっていた所を
道に迷った観光客がたまたま通り掛かり、病院まで連れていってくれたのだとか…。
足の怪我は心配だったが
命には別状はなかった事
待ち合わせ場所に来れなかった理由が分かり
今までの人生では味わった事がない程の安堵感を覚えた。
その日の仕事を終え、宿に帰ると、シュウちゃんは宿にいて足を押さえながら笑っていた。
たいした怪我ではないが、右足の自由がきかないのでバイクに乗るのは危ない。
家に連絡して、帰りを一週間遅らせたらしい。
…………………………
それからの一週間、一日一日を大切に過ごし、今の幸せを噛み締めていた。
時は経ち、再び距離が遠のく日がやってきた。
今度こそ、12時半の待ち合わせにシュウちゃんはやってきて
僕の今の仕事が落ち着く10月中旬には、北海道を出て京都に会いに行く。
という約束を交わし
しばしの別れを惜しんだ。