1998年7月27日  part3


照明の数が減り、辺りが段々暗くなってきた。

そして道はそのまま山道へと続いて行く。



「さあ、いつまで続く?」


軽い緊張感を保ちながら坂を登った。

正直、一人で夜の山道を自転車で登るのは怖い…。




「次の町の明かりよ、早く見えてくれ!」



そんな願いとはうらはらに山道は一向に終わる気配を見せない。

先に明かりも見えてこない。

僕は賭けに負けたようだ…




暗い山道の恐怖感

一人きりの孤独感

辛い道のりの疲労感が

僕の心と体を蝕んでいく、





1時間ほど登った所で、限界を感じて歩道で横になった。


「どうすりゃいいんだよ…。」


10分程横になっていると、頭が冷静になってきたのか

弱気になっていた自分に気付いてきた。

そして、この数日間の出来事を思い出し


「希望をすてるな!前へ進めば、きっとなんとかなる!」


そう信じ、呪文の様に何回も繰り返し自分を奮い立たせた。






23時

再びペダルを漕ぎ出し、30分程経った頃

山の頂上に着いた。



なにか大きな建物が建っているのが見える。

昼は、うどんやそばなどの軽食が食べれる場所のようだ。


「どうする?ここで寝るか?」


しかし、真っ暗で、あくまでも山の中のそこは

寝袋一つで寝るにはあまりにも抵抗があった。



少し立ち止まって休憩がてら、悩んでいると、建物の敷地内に

荷物をたくさん載せたバイクが一台止まっているのが見えた。


「旅人か?」


淋しくてたまらない僕は、もし旅人がいるのなら、話しがしたかった。


敷地内に入り辺りを見回すと、ライダースーツを身にまとった青年が

大きな石を椅子替わりにして座っているのが見える。

なになら電子手帳のような物をいじっているようだ。



僕は、思い切って話しかけ自分を紹介した。


推定年齢30歳位の青年は、優しい口調でいろいろ話しをしてくれた。



彼は、東京から北海道までバイクで旅をしている途中

今日はここにテントをはって寝るつもりだと言う。


そして、どうやら旅慣れしているだろう彼は

「ここから次の町までは自転車ではまだ遠いよ、よかったら僕のテント広いから寝ていったら?

朝4時位には出発するけどね。」

と言ってくれた。


思いがけない言葉にびっくりした。


(会って10分の人とテントで一緒に眠る事になるなんて…。

まあこれも神の思し召しか…。)


「ありがとうございます。よろしくお願いします。」

「不安20%」「喜び80%」の内心は表情にはださず

お願いした。


一緒にテントをはり

横になりながら少し話しをしていたが

人がいてくれて安心したのか、すぐに熟睡してしまった。



「神様ってやっぱいるのかなぁ。」


本日の走行距離52.5km


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